施設・公共建築にこそホウ酸処理の強みがあります
非住宅分野でも広がる木造化
ホウ酸を使用した防腐防蟻工法であるボロンdeガードの主な施工対象は住宅が圧倒的に多いのですが、近年では一般建築物(施設や公共建築)でも採用機会が増えています。
住宅は住まい手にとって最も大切な財産の一つです。そのため、建築基準法では一定の防腐防蟻対策をおこなうことが義務付けられています。しかし、住宅に比べ一般的に規模が大きくなる建築物の場合、鉄筋コンクリート造の建物がほとんどだったこともあり、防腐防蟻対策が義務付けられてはいませんでした。
しかし、地球温暖化対策や国産材の利用促進の観点から、非住宅の建築物にも木造化の波が押し寄せています。国としても非住宅分野の木造化を推進しており、技術的にも、強度的にも木造で高層の建物が可能となりつつある中、住宅と同様に防腐防蟻対策が求められるようになってきました。
今回は、施設・公共建築にこそホウ酸処理が適しているポイント3点について解説したいと思います。
広島県・最廣寺でもホウ酸処理が採用された。
空気を汚さない、万人に安心を
まずホウ酸は、天然の無機ミネラルという性質上、空気を汚しません。住宅で使用されている防腐防蟻剤の多くは農薬由来の有機系合成殺虫剤で、空気中に有効成分が揮発・分解していくことで残存農薬の問題に対処しています。
もともと有効成分が残存しないように設計されているので、空気を汚してしまうことを前提としているわけです。最近の合成殺虫剤は安全性が高まっているといわれていますが、この基本的な性質は変わっていません。化学物質に対する耐性は人それぞれで、鈍感な人もいれば、敏感な人もいます。
住宅であれば、家族の中に敏感な人がいなければ問題にならないことがあっても、不特定多数の人が出入りする施設や公共建築物の場合は、万人に対して問題にならないようにしておくことが求められます。そもそも、化学物質過敏症というのは、鈍感な人でもいつ発症するかわからないものであり、その影響は代々蓄積され、世代を超えて健康被害が受け継がれていくといわれています。
ご住職は多くの檀家さんが出入りするからこそホウ酸を選ばれた。
再処理が不要で、メンテナンス費を軽減
住宅以上に長寿命が求められるのが施設や公共建築です。世界最古の木造建築物である法隆寺に代表されるように、もともと木造建築は腐朽、蟻害がない限り、長寿命なのが特徴です。しかし、耐震性や温熱性の向上など、木造住宅・建築に求められる性能が進化する中、防腐防蟻対策が欠かせなくなりました。
そんな中にあって合成殺虫剤は前述のとおり、成分が揮発・分解してしまうことから数年毎に再処理することが必要です。しかし、床下など木材が露出している部分は再処理できても、壁の中などに隠れてしまった部分に関しては事実上再処理することはできません。再処理できなければ処理していないのと同じとなり、シロアリに対して無防備な状態となってしまいます。
少しでも蟻害があると、初期の耐震性は確保できなくなります。実際に蟻害があった建物の多くは倒壊や半壊を免れないという調査結果は、大きな地震が起こるたびに報告されてきました。
地震の際に避難所の役割も求められる公共施設が、地震に弱くなってしまっていては話になりません。ホウ酸は揮発・分解されることがなく、長期に渡って防腐防蟻効果が持続します。再処理が不要なことはメンテナンス性、経済性という面でも有利であることはいうまでもありません。
雨に流されない限り、ホウ酸は木材に残存し続ける。
環境への影響がない、公益性に貢献
3つ目のポイントは、ホウ酸は天然の素材ゆえに環境に負荷を掛けない、影響がないということです。
そもそもホウ酸は、環境中に薄く広く存在している物質です。温泉やワインの中に含まれていたり、私たちは日々野菜をとおしてホウ酸を摂取しています。ホウ酸の持つ殺菌作用は古くから利用されていたもので、ヴァイオリンの名器といわれるストラディバリウスにも木材保存剤として利用されてきました。目薬に使われていることは多くの人がご存じのことと思います。
そんなホウ酸ですが、腎臓を持たない昆虫が摂取すると致命的に作用するのです。殺虫剤のような即効性はありませんが、代謝がストップし、やがて死に至るのです。
一方で合成殺虫剤の主な成分であるネオニコチノイド系薬剤は、ミツバチの大量死に影響しているとされ、多くの昆虫にとって脅威となっています。昆虫は、地球上で最も多様性のある生物群で、豊かな生態系を支える存在です。私たちは昆虫の存在なしに生きていくことはできません。
そんな薬剤が大量に必要とされる施設・公共建築に使用されたら、その影響を見過ごすことはできません。大きな建物にこそ、ホウ酸処理がなされるべきです。
小屋裏にはホウ酸の粉を直接散布するダスティング処理も。
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