「ホウ酸」は暮らしを支えるは身近な素材です!
「ホウ酸団子」や目薬、温泉などで「ホウ酸」の文字を見かけることはありますが、日常的にはあまり聞き慣れない「ホウ酸」。ですが、実は、産業分野では意外にも私たちの暮らしを支えている身近で重要な役割をもった素材なんです。今回は、ホウ素やホウ酸のさまざまな分野での重要な用途についてご紹介していきます。

<ホウ素(B)の詳しい用途>
1.ガラス・セラミックス材料
ホウケイ酸ガラス(borosilicate glass)の構成材料。通常のソーダ石灰ガラスよりも熱膨張が小さく、温度変化に強い。
【用途例】
実験用ガラス器具(ビーカー、試験管など)
オーブン対応の耐熱ガラス製品(例:パイレックス)
スマホやタブレットのディスプレイ用ガラス(強化タイプ)
2.半導体材料
ホウ素はP型半導体を作るための「ドーピング剤」。シリコンの結晶構造に微量のホウ素を加えることで、正孔(電子の穴)を形成し、電気的な性質を変える。
【用途例】
ICチップ、トランジスタ、ソーラーパネル
3.超硬合金材料(ホウ化物)
ホウ素は金属と結びついて、ホウ化チタン(TiB₂)などのホウ化物を作る。硬度が非常に高く、耐摩耗性や耐熱性に優れる。
【用途例】
切削工具、防弾プレート、航空エンジン部品
4.中性子吸収材
ホウ素-10(¹⁰B)は中性子をよく吸収する性質があり、核反応を抑えるのに使われる。
【用途例】
原子炉の制御棒、放射線シールド材
BNCT(ホウ素中性子捕捉療法):がん治療法の一つ
5.航空宇宙材料
ホウ素繊維:炭素繊維と同様に軽くて強いが、さらに高弾性率。
高価だが、軽量化と高強度が求められる分野で使われる。
【用途例】
航空機の翼や機体、ミサイル部品、ゴルフクラブ・釣竿(高級品)

<ホウ酸(H₃BO₃)の詳しい用途>
1.殺菌・防腐剤
軽度の酸性を持ち、カビや細菌の繁殖を防ぐ効果がある。医療・衛生用途で昔から使用されてきたが、最近は安全性の懸念から使用が制限されている。
【用途例】
目薬(軽い結膜炎の洗浄)、傷薬(軟膏)、木材の防虫・防腐剤
2.ガラス製造
ホウ酸はガラス原料にホウ素を供給する安定した化合物。特に耐熱ガラスや化学的に安定なガラスに使われる。
【用途例】
実験用器具、キッチン用品、太陽光発電パネルのカバーガラス
3.農業用途(ホウ素肥料)
植物にとってホウ素は必須の微量栄養素。細胞壁の構築、花粉の発芽、根の発達などに重要。土壌中にホウ素が不足すると、奇形果や発育不良を起こす。
【用途例】
ホウ素添加肥料(ホウ酸塩肥料)、葉面散布剤

4.工業用フラックス(融剤)
金属を溶かしたり接合したりする際に、表面の酸化膜を除去し、接合性を高める。ホウ酸はフラックスとして機能し、はんだ付けや溶接時に使われる。
【用途例】
銀ろう、銅のはんだ付け、鉄鋼の精錬
5.化粧品・洗剤
pH緩衝作用や抗菌性があり、皮膚に優しいとされて一部のスキンケア商品に使われる。ただしEUなどでは化粧品での使用が制限されてきている。
【用途例】
ベビーパウダー(旧来)、フェイスクリーム、軟膏、洗顔料

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