ホウ酸処理は、浸水被害の復旧時にも期待されている!
多発する水害被害に対する対応が求められている
日本ボレイトでは、ホウ酸を使った防腐防蟻処理工法やホウ酸関連商品を開発、販売していますが、近年では浸水被害に遭われた方から、浸水した住宅の床下の清掃や消毒をしてほしいという依頼が増えています。今回は実際に対応した事例と消毒する際に使用する薬剤などについて解説したいと思います。
下の写真は、2019年に長野県の千曲川が氾濫した際に浸水被害に遭われた住宅の写真です。床下が浸水すると、床下には大量の泥が残ってしまいます。まずはこの泥をできるだけ撤去する必要があります。そして、概ね泥が撤去できたら、サーキュレーター(換気扇)などを使って、とにかく床下を乾燥させます。乾燥するのに2週間以上は見ておくとよいでしょう。掃除は床下が十分に乾燥してから行います。泥が撤去され、すでに乾燥している場合は、薄く残っている泥をスクレパー等で剥がし、断熱材などに付いた泥も落としながら掃除機で丁寧に吸い取ります。
浸水被害に遭った住宅の床下。まずは速やかに泥を屋外に掻き出す。
床下が乾燥したら薄く残った泥を剥がして、掃除機で吸い取る。
素早い清掃と適切な消毒で初期対応
床下が十分に乾燥していたとしても雑菌等が繁殖している可能性も十分に考えられるので、床下に入る際はきちんとした装備(マスク、ゴーグル、防護服等着用)をしたうえで入り、作業を行うことが大切です。また、床下は思った以上に狭く、配管等が通っていることも多いので、細かな部分の泥を丁寧に落とすことは、実際には素人の皆さんには難しく、要領が分かっている業者に任せるのが現実的だと思います。
清掃が終了したら今度は消毒を行っていきます。消毒に使用する薬剤の代表的なものは「次亜塩素酸ナトリウム」「消毒用アルコール」「塩化ベンザルコニウム(逆性石鹸)」「ジクロロイソシアヌル酸」の4つです。ただ、消毒用アルコールや塩化ベンザルコニウムは食器や家具などの消毒に適していて、床下などの環境や大量に使用する場合などは他の2つの薬剤が一般的だと思います。とはいえ、次亜塩素酸ナトリウムは濃度の調整が面倒な上、保管ができないのが難点です。また、強アルカリ性で危険性が高く、噴霧処理には適さないので、布巾等で拭くなどの対応にならざるを得ません。そうしたことから、弊社ではジクロロイソシアヌル酸を用いることが多いです。
床下に潜る際は、マスクやゴーグルなど、きちんとした装備をする。
床下には意外と配管などの設備があり、素人では掃除するのは難しい。
消毒薬剤をつくり、きちんと有効な濃度を確認する。
ジクロロイソシアヌル酸とホウ酸で防腐防蟻効果もプラス
ジクロロイソシアヌル酸はタブレットになっているので使い勝手が良く、そのまま水に混ぜて使用できますが、シロアリ対策で用いるホウ酸とあわせて使用すれば、消毒だけでなく防腐防蟻効果も持たせることができ一石二鳥です。また、次亜塩素酸ナトリウムほど強い刺激がなく臭いもしません。清掃も消毒も知識や経験のあるプロに任せるのが安心で、とくに消毒はきちんと効果を発揮させるには専門の業者がやるべきだと思います。
ただ、災害時はどの業者も忙しく、業者の手が空くのを待っていられないというのも現実でしょう。どうしても自分の手でやりたい場合は、ホームセンターなどで販売されている消毒剤を使われることをお勧めします。例えば、お風呂の水をきれいにする「風呂水洗浄剤(主成分はジクロロイソシアヌル酸)」などを使うのが安心だと思います。
床下全体に噴霧処理する。
カビが生えてしまった木部にもきちんと処理する。
ホウ酸処理業者と地域工務店が連携して対応するしくみづくり
いずれにせよ、浸水の被害に遭われた際には速やかな対応が求められます。対応が早ければ早いほど、復旧も速やかに行え、復旧のための費用を抑えることにもつながります。実際に自分で作業をするかどうかは別として、知識として知っておくと良いかと思います。
そして今後は、ホウ酸を使ったシロアリ防除業者と地域工務店が連携することで、浸水被害に対して速やかな対応が行えるしくみを検討していきます。防腐防蟻だけではない、ホウ酸処理の新たな使用機会として、ご期待いただければと思います。
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