殺虫剤と害虫は「イタチごっこ」の関係
殺虫剤に強い耐性を持った蚊が出現!
最近こんな記事を目にしました。「アジアにおける超殺虫剤耐性デング熱媒介蚊の発見」というもので、ベトナムで採集されたネッタイシマカ(デング熱の主要な媒介蚊)がピレスロイド系殺虫剤に著しく強い耐性を示していることが確認されたというものです。
(出典:国立感染症研究所ホームページより)
採集したネッタイシマカの多くで作用点ナトリウムチャネルの遺伝子上に重要なアミノ酸置換(L982W)をもたらす突然変異が認められ、別のアミノ酸変異(F1534C)も同時に保有する個体も発見されました。この二重変異が解毒酵素との組み合わせにより、桁外れに強い耐性(野生型の1000倍以上)を持つ蚊を生み出したと結論付けています。デング熱の死者数は世界的に増加しており、媒介蚊が多く生息する東南アジアをはじめとした熱帯・亜熱帯に属する国々では媒介蚊の対策は喫緊の課題になっています。
この記事の詳細はこちらから↓
https://www.niid.go.jp/niid/ja/basic-science/entomology/11782-ent-2023-01.html
殺虫剤に強い耐性を持った蚊が出現!
今回の記事に限らず、同じ農薬を使い続けていると農薬が効かなくなるという話は以前からもありました。例えば、農林水産省のホームページでは次のように害虫の殺虫剤に対する「耐性」について説明しています。「同じ種類の虫でも殺虫剤に強い虫と弱い虫が混じっているのが自然界です。そこに殺虫剤が使われると弱い虫は死に、強い虫が残ると考えられます。また、突然変異でその殺虫剤に対して強い性質を持った虫が出現し、そのような虫ばかりが生き残ることも考えられます。昆虫やダニなど世代交代が比較的短いものは、同じ薬剤を何年も使用していると効果がなくなる現象がおきやすいと考えられています。(抜粋)」
アブラムシなど、カメムシ目の昆虫には農業害虫が多い。写真はオオアブラムシ。
(出典:シロアリポリス「この虫、しろあり?」より)
冒頭で紹介したデング熱の記事は、後者の「突然変異」に該当するものと思われます。そして、上述した農林水産省の説明では、異なる種類の薬剤をローテーションで使うことによりある程度回避することができる、としながらも「しかし、同一薬剤を連続して使用する場合、薬剤への抵抗性がついてしまうことはさけられないため、新しい薬剤の開発を続けることが必要です。(抜粋)」と害虫と殺虫剤のイタチごっこの関係性を認めています。
農林水産省の「耐性」に関する説明はこちらから↓
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0606/03.html
今すぐに生物学的対策へシフトを
強力な殺虫剤が、より強力な害虫を生み出す結果となっているとしたら何と皮肉なことでしょうか。しかも、そのことを分かっていながら続けるしかないというのは、天に唾していることと同じです。このイタチごっこを止めるには、生物学的対策や物理的対策など、農薬や農薬由来の殺虫剤に頼らない害虫対策を見つけ、社会に普及することしかありません。
残念ながら、こうした殺虫剤と同じものが住宅の防腐防蟻剤として使用されているのが日本です。シロアリの殺虫剤に対する耐性に関しては不明ですが、それ以前に殺虫剤の効果は数年しかなく、寿命の長い住宅を再処理なしでシロアリ被害から防ぐことはできないのです。幸いにして防腐防蟻の分野では「ホウ酸」が生物学的対策方法の一つとしてすでに世界中でスタンダードになっています。
ホウ酸は代謝を阻害する食毒としてシロアリに作用するため、シロアリに耐性が備わることはありません。しかも無機鉱物で揮発しないため、水に溶けない限り効果はずっと持続します。殺虫剤を選択しない、少なくとも住宅の防腐防蟻ではそれが可能なのです。
ホウ酸がシロアリ対策に有効な理由はこちらから↓
https://shiroari-police.com/drugs/
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